10月。秋は夕暮れ。私たちは土の上。
10月の十勝はめっきり寒くなりました。皆さまお元気でお過ごしでしょうか?
地道に頑張っていた3.5ヘクタールの大豆畑の雑草取りも、終わりを迎えつつあります。3.5ヘクタールといっても、なかなか実感が湧かないかもしれません。東京ドームの約4分の3にあたる広さです。そこに生えてくる雑草を、たった二人で手取りしました。実際に畑に立ってみると、「冗談だよね?」と思うほどの広さです。しゃがみながら、ハサミで一本ずつ切って、背負って畑から出す。その繰り返し。気がつけば、二人とも泥だらけです。「なんでこんなに大変なことしてるんだろう…もう逃げ出したい!」そう思う日も、正直あります。
それでも確実に言えることは、この世界を知ることができて、本当に良かった。昔の自分だったら考えもしなかったようなことを、今は考えるようになりました。自分の人生だけを見ていた頃より、何倍もスケールの大きなことを考えられるようになったと思います。そして何より、これまでの人生では出会うことのなかった、未知の世界にいる人たちと触れ合う中で、生きる上で最も大切なことを教えてもらいました。だから、もう後戻りはできないのだと思います。
ぶどう畑では、単管パイプからパイプへ、何十メートルもある太いワイヤーを這わせました。これが、ものすごい力で引っ張らないと張れないんです。重い上に、途中で絡まったりもする。たった一本張るだけでも、とんでもなく大変な作業です。「一本張っただけなのに、もうこんなに疲れている…」そう思いながらも、その一本で、少しだけ畑の景色が変わる。「ああ、ここまで来たんだな」と思います。夕食時には、手が痛くて箸が持てなくなることもありました。おかげで左手でも何とか箸を持てるようになりました!食べ過ぎずに済むので、ダイエット中の方にはおすすめです(笑)。
農業を始めてからというもの、自分がこんなに面白い人間だったなんて、想像もしていませんでした。姉も私も、寝る前には、その日にあったことを二人で振り返りながら、よく笑っています。畑だけではありません。地元の企業を一軒一軒訪ねて回ることもしています。もちろん、塩対応されることだってあります。それでも、どんなに辛いことがあっても、自分たちに課しているルールは、何でも笑いに変えること。笑ってしまえば、また次の日に立ち上がれるからです。
私たちがやっていることは、決して簡単ではありません。農業も、ワインも、アートも。一つひとつを手探りで進めながら、その先に、私たちがつくりたい場所があります。障がいのある人も、そうでない人も、自分の表現や力を持って社会とつながり、「ここにいていい」と思える場所。誰かが誰かを一方的に支えるのではなく、それぞれが持っているものを持ち寄って、一緒に未来をつくっていける場所。私たちは、そんな居場所をつくりたいと思っています。心配ごとしかないように思える人生ですが、それでも前を向いて歩いていけるのは、応援してくださる人、共感してくださる人、そして一緒に未来を見てくださる人がいるからです。
今日抜いた一本の草も、今日張った一本のワイヤーも、いつか私たちが思い描く未来につながっていく。格好悪くてもいい。逃げ出したくなったっていい。それでももう一度、前を向けばいい。だから今日も土の上に立つ。
冷たい風の中で。少しずつ短くなっていく夕暮れの中で。
まだ見えない未来に、ほんの少しだけ希望を置いて。
それでは今月も、
“SEIZE THE DAY – 今を生きろ”
一般社団法人Arts and Creative Mind 代表理事 杉本志乃
理事 萩中華世
#THEWORLDTokachi #十勝 #障がい者アート #農福連携

